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浅煎りコーヒーブーム考 |
相変わらず、オシャレ系の「浅煎り」コーヒーショップがメディアを賑わしている感がありますが、果たして日本国民はそこまで浅煎りコーヒーが好きなのかどうかということは大いに疑問が残るところでもあります。
浅煎りが、過剰にもてやはされているのは、「サードウェーブ」と呼ばれる一種のブームです。
一般的にコーヒー豆は煎りが深ければ苦味が強調され、煎りが浅ければ酸味が強調されます。 流行に乗って開業したロースターたちは、
「豆の個性を損なうような深煎りを避け、必要な分だけローストする、つまり浅煎りが美味しいコーヒーであると定義付けました。それが必然的にひとつのトレンドになったのだと思います。
「コーヒーの価値観が変化し、品質基準を担保したスペシャリティコーヒー×単一農園のシングルオリジンで土地特有のフレーヴァーを楽しむようになりました。簡単に言えばワインの文化に近い楽しみ方ですね」
などと、もっともなことをことを言う人も多いのですが、「深煎り=豆の個性を損なう」とは、よくぞそんなことを言えたものだと思います。 そもそも、作り手や栽培地によってことなるフレーバーを味わうために浅煎りが優れているなどという理由は、的はずれも甚だしいものがあります。
確かに、パナマのエスメラルダ農園産の「ゲイシャ」をフレンチローストにして飲む人はまず存在しませんが、多くのコーヒー豆はある程度熱を加え、上手に糖化させるシティー~フルシティーロースト付近で最も味わいを増すものです。
かの有名な珈琲屋「コフィア」のシングルオリジンは、
ブラジル タンザニア マンデリン モカマタり
だけですが、いずれも艶を発するフルシティーロースト。 焦げ味を感じさせないギリギリのところまで煎られていながら、味わいはそれぞれが極めて強い個性を主張しています。
「豆の個性を味わうために浅煎りが相応しい」という理屈がまったく成り立たないことを実感させられます。
「コーヒー豆の品質が上がったゆえに、浅煎りで楽しめるようになった」などという人も時々見かけますが、野菜や果物と違って、毎年毎年新品種が登場する作物でもありませんから、この説明は的外れです。
プロセス技術が発達した
という人もいますが、ブラジルの大規模コーヒー豆プラントならまだしも、世界のコーヒーファクトリーは昔ながらの小規模事業所であり、手作業での過程を経ているものが圧倒的多数です。
それゆえに、ここ数年で珈琲豆の品質が向上したというのは誤りであり、むしろマンデリンなどに至ってはここ10年程は非常に出来が悪く、苦労を強いられた珈琲輸入商社は数知れずです。
結局は、XX農園とか、フェアトレードとか、昔に比べると、産地や作り手を明確にうたうことで、付加価値をみいだそうとしているのであって、根本的な品質については、今も昔もさほど変わることはないのです。
長野県産グリーンアスパラ
というよりも
雪深い北信州木島平村で丹精込めて栽培された 竹内農園産 特選 グリーンアスパラ
として販売したほうがより消費者の心に響くのと同じ理屈です。
要するに浅煎りブームを正当化&正義化するために美辞麗句を書き並べているだけなのだと私は考えています。
タピオカブームや高級食パンブームを単なるブームと呼ばず、まるで日本人の暮らしに定着したかの如く説明するメディアにも似ています。
浅煎り一辺倒で
ワインのような、 カシスのような、 オレンジのような、 ベリーのような、 アプリコットのような
などとやたらと果物の風味に例えようとする珈琲界のしきたり、風潮を一般消費者にまで押し付けるのもまた、どうかと思います。
そんな風潮を正当化するのに
「珈琲が果実であることが納得させられます!」
などと言う人もいますが、果肉を溶かして飲んでいるならまだしも、種を焙煎したあとの抽出液ですから、これまたおかしな話でもあります。
大体、珈琲にそんな果物のような味を求めている人がどれ位存在するのか、非常に疑わしいものがあります。
事実、先日NHKの番組
突撃カネオ君

番組の最後で、エアロプレスで淹れた浅煎りコーヒーを口に含んだ瞬間、MCの有吉さんが
「私は好きではないですね。(ワラ)」
と、顔をしかめてコメントした姿が非常に印象的でした。
浅煎りコーヒーを持ち上げまくった番組の最後に、まさかのネガティブコメント。
よくカットにならなかったと思いますネ。(^^)
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